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医療安全基本用語集

用語編纂委員会 発行

岡田 有索、加藤 直樹、小松原 明哲、◎酒井 亮二、清野 敏一、辰巳 陽一
長村 文孝、橋田 亨、藤井 千枝子、深山 正久、深山 治久

【危機(crisis)】
発生した事故が重篤な障害を発生している状態。障害の転換期とする考え方もある。
あるいは、ある事象に対して悪い結果が予測され、心理的不安感が増大する状況を指す。結果の規模などが構造的に予測できない不確実性のもの(例えば自然災害など)と、一定程度予測可能なパラメトリックなもの(例えばヒューマンエラーなど)とに大別できる。リスクと異なり、発生するかどうかも不明確、若しくは全く予兆が無く突然発生する事もある。

リスク(risk)】
過去のデータなどを用いて将来起こることが予測可能であり、組織、個人の収益や損失に影響を与える不確実性概念。危害の発生頻度×損害規模で定量化が可能なもの。(経済産業省「先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント 実践テキスト」)

*Ian I.Mitoroff は(「危機を避けられない時代のクライシス・マネジメント」徳間書店 2001 年 p.21)「リスクマネジメントは主として自然災害に対処するものであるのに対し、クライシス・マネジメントは人間によってもたらせられるもの」と指摘している点に注意したい。

【アクシデント】
実際に起きた障害であり、それはリスクとは言わない

【リスク学】
事故予防、未然防止を目標する安全学の 1 つ。リスク評価(リスクアセスメント)、リスク管理(リスクマネージメント)、リスクコミュニケーションおよびリスクガバナンスを構成要素としている。

リスクマネジメント(risk management)】
想定されるリスクを予防的に回避、防ぐための手段を検討すること。事故を起こさないように事態、事象をマネジメントする事。

【危機管理(crisis management)】
発生した有害事象を最小限に抑える方法や早期回復の為の対策を検討すること。また被害極小化と早期の原状回復のための最善の行動をマネジメントする事。

【安全(Safety)】
人とその共同体への損傷、ならびに人、組織、公共の所有物に損害が無いと客観的に判断されること(文部科学省:「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会」報告書、2004 年 4 月)。

【安全学(Safety Philosophy)】
社会的・人間的な側面も含めて、安全問題とその対処法を分析・探求する学問(日本学術会議、安全に関する緊急特別委員会「安全学の構築に向けて」(平成 12 年 2 月 28 日)。主体的かつ総合的な安全に対する哲学的思想を基礎として、許容できないリスクが無い状況を実現する学問。

【安全科学(Safety Science)】
安全学が主体的かつ総合的な哲学的思想を基礎とした学問であるならば、安全科学は専門分化としての科学の特徴を活かしながら、「安全」を実現するための客観的で厳密な学としての学際的科学(辛島恵美子著「現代リスク論と科学化の意味…安全科学と安全学の基礎づけとして…」1997 年 科学基礎論研究 Vol.24 No.2 p.80~81参考)。

【ガバナンス (governance)】
組織運営の決定方法の 1 つでする。ある事象に対する管理運営方針(ルール)の決定をそれに関与する様々な利害関係者によって行い、関係者はそれに従って活動する。全員参加型の意思決定システムとなる。
他方、ガバメント(government; 統治)は強制力のあるルールを管理者側が策定し、組織構成員はそれに従って活動する。

【危機管理・リスクマネジメントの位置づけ】
安全学は安全科学を包括し、かつ抽象的学際的概念としての学問であり、安全科学は個別具体的概念としての科学である。危機管理とリスクマネジメントはその定義の領域において安全学と安全科学とを媒介するパラメーターとして位置づけられる。

【与薬】
患者に必要な薬剤は、医師または歯科医師が処方し、薬剤師が調剤する。与薬は、医師の指示を受け、看護師が患者に対して行う薬の管理などの総称として用いられることが多い。看護師は、与薬の最終実施者となるため、看護師のひやりハット報告が多い。一度体内に入った薬を取り戻すことはできないため、患者が参加する医療を推進し、患者自身が安全な与薬の最終ゲートと考えられる。しかし、薬のプレセボ効果もみられるように、患者と医療従事者の信頼関係は薬の効果に影響する。与薬時は、指差し確認などの基本行動とともに、ヒューマンエラーを防ぐ補助手段を併用しながら、正しい与薬を実施する必要がある。

【転倒・転落】
転倒や転落による骨折は、寝たきり状態の原因になり、生活の質が低下する。転倒を経験する高齢者は多く、段差の解消などの安全対策が求められる。ベッド上安静の患者は、ベッド柵を乗り越えて転落することや、ベッド柵の間に身体が挟まることなどの事故も起こりうるため、ベッド柵の確認や、ベッド周囲の環境整備が必要である。転倒予防のための離床センサーは、患者の行動制限となることや、活動制限に伴う筋力低下などの課題がある。患者の自立支援の視点を含めた転倒・転落予防のアセスメントを行い、事故防止に努める必要がある。

【リスク (Risk)】
将来における発生する危険性のこと。実際に起きた危険はリスクとは言わない。
リスク研究 以下の 4 つのモジュールを循環して、公衆が納得できるレベルまでリスクを低減するシステムを構築する。
リスクアセスメント (risk assessment)
リスクマネージメント (risk management)
リスクコミュニケーション (risk communication)
リスクガバナンス (risk governance)

【院内ラウンド(院内パトロール)】
チェックリストに従って現場を点検する。

【品質管理】 JIS には 2 種類の考えが存在する。
品質マネジメント(Quality Management) 「品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメントの一部」と定義する。

品質管理(Quality Control) 「品質保証行為の一部をなすもので、部品やシステムが決められた要求を満たしていることを、前もって確認するための行為」と定義する。顧客に提供する商品およびサービスの品質を向上することを目的としている。現場では、この定義を使用する。

【リスクコミュニケーション】
「生存、健康、経済的または社会的幸福への脅威に直面している専門家や担当者間において、それらに関する情報、助言、意見などをリアルタイムに相互交換すること。」
出典:WHO より引用。

【ガバメント(Government)】
組織経営層が定めた一定の規則に従って、組織構成員が活動するシステムのこと。拘束力のある統治システムである。

【ガバナンス(Governance)】
組織活動に対する関係者全員(医療では患者も含む)により組織の規則を意思決定し、合意形成するシステムのこと。

ナレッジマネジメント】
「暗黙知(概念化できない知識)や個人知を表出して形式知(形式化、言語化、概念化された知識)や組織知(組織が共有する知識)に転換していくマネジメント。」
出典:井原久光.テキスト経営学(第 3 版).東京:ミネルヴァ書房,2009:323 から引用。

【SECI プロセス】

出典:野中郁次郎,竹内弘高.知識創造企業.東京:東洋経済新報社,1996:93.
・共同化(Socialization)
個々人の暗黙知(思い)を、共通体験を通じ互いに共感し合う様式(モード)。
・表出化(Externalization)
共通の暗黙知から明示的な言葉や図で表現された形式知としてのコンセプトを創造する様式(モード)。
連結化(Combination)
既存の形式知と新しい形式知を組み合わせて体系的な形式知を創造する様式(モード)。
・内面化(Internalization)
連結化によって得た体系的な形式知を実際に体験する事によって身に付け暗黙知として体化する様式(モード)。
出典:野中郁次郎,梅本勝博.知識管理から知識経営へ-ナレッジマネジメントの最新動向-.人工知能学会誌 2001:16:1:4-5.

【知識】
正当化された真なる信念であり、情報を認識し行動に至らしめる秩序。身体的技能や行動制御能力を含む広義の知識。

【知識伝授】
知識に関する情報やデータを伝えることで、他者に同様の知識を移転しようとする行動。ただし、完全な複写を意図するものではなく、初歩を教え(initiate)、その後は伝授を受けた側の個別性に従った展開と応用を許容する。
出典:村上成明.看護実践の知識伝授プロセスにみられる暗黙知伝授の有用性の検討-看護管理者の知識伝授体験より-日本看護管理学会誌 Vol 9,No2,2006 51