総会長挨拶
第9回日本医療安全学会学術総会
代表総会長
森田 明夫
(日本医科大学 医学研究科長 脳神経外科 大学院教授)
この度、2023年3月に東京にて第9回日本医療安全学会学術総会を、早稲田大学法学学術院 和田仁孝教授、山梨大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部 荒神裕之特任教授とともに開催させていただくことになりました。
第8回から時期もまもない開催で、ご迷惑をおかけいたしますが、みなさまぜひ日々の医療安全に関する叡智を集結していただけると幸いでございます。
World Health
Organizationではこの10年間(2021-2030)のGlobal
Action
planとして7つの大きな行動目標の元で「予防しうる危害を最大限に減ずること」を主目標としています。
この2年超にわたるCOVID禍で明らかとなったように、限られたリソース及び刻々と変化する状況の中で最大限の医療を安全に提供できる体制の維持と迅速な構築は極めて大切です。
第8回の本学会のテーマでもある「医療者の安全の確保」と共に、「感染症・パンデミックや災害・戦争時における安全な医療の提供」、「家族や患者の努力」も良質な医療の必須な要素であることは極めて重要な世界的課題であることを改めて認識いたしました。
日本も先進国の一員として、率先して安全な医療の確立のための国際活動のリーダーであるべきと思います。
第9回大会ではこのWHO Global Action
Planで挙げられた7つの行動目標 1: Zero avoidable
harmへの努力、2:
信頼できる医療システムの確立による患者の保全、3:
全て医療プロセスにおける安全の確保、4:
患者・家族を含めた安全医療の確立、5:
すべての医療職種が安全な医療を企画し提供できるような知識・技術の教育・提供、6:
避けられる危害の基準を下げより安全な医療を確立するための知識・情報の絶え間ない提供、7:
多職種、多国籍の共同・連携に基づく安全な医療の向上の達成と維持を議論の中心に据えたいと思います。
その中で、AIなどの工学的手法の導入、医療のデジタル化や、国際的な活動の紹介なども含めて、多職種共同・連携に基づく持続可能な医療安全を地域差、施設間格差なく確立するための情報提供の場となる学術会議を目指したいと思います。
ぜひ、医療従事者及び関係者の方々の積極的な参加、また関連企業、諸団体のご支援をお願いできれば幸いと存じます。
何卒よろしくお願いいたします。
来年3月に東京でお会いしましょう。
総会長からのメッセージ
第9回日本医療安全学会学術総会
共同総会長
和田 仁孝
(早稲田大学法学学術院 教授)
第9回日本医療安全学会学術総会に関して、日本医科大学森田明夫先生を中心に、山梨大学の荒神裕之先生とともに共同総会長を務めさせていただくことになりました。
私自身は法学者であり、医療者ではありませんが、外側からの視点から、医療安全にかかわる様々な問題をめぐって、意義ある学術総会になるよう尽力させていただく所存です。
医療安全は、医療者の努力のみによって達成されるわけではありません。
患者自身による協力ないし主体的参与は、医療安全をいっそう向上させていくためにも必須の要素であると思います。医療それ自体が、病気という現象に対する医療者と患者の協働作業にほかならず、それゆえ医療安全も共同作業によって達成されるのだという視点は重要です。
また、医療安全が破れ、事故が生じた際に、これにどう対応していくかの社会的システムの在り方も、間接的には、医療安全を支援する重要な社会的機能を果たしています。
事故後の医療者と患者家族の説明や対話を支援する医療メディエーションモデルの構築、事故で傷ついた医療者へのケアとサポートのシステムの再編を目指すピアサポート活動など、私自身も取り組んできましたが、こうした「拡張された医療安全」の概念を念頭に考えていくことも重要な課題と考えます。
こうした観点から、事故を防止する医療安全と、それが破れたときの対応システムの双方を視野に収め、その循環的影響過程を含めて考察する視点を前提に、医療者でないがゆえに持ちうる視点から、本学術総会における医療安全をめぐる議論の活性化に、いささかでも貢献させていただければと思います。
2023年には、ようやくコロナ禍の影響も脱し、日常が復活すると思われます。
ぜひ、活発で充実した議論を交わすことができればと楽しみにしております。
共同総会長からのメッセージ
第9回日本医療安全学会学術総会
共同総会長
荒神 裕之
(山梨大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部 特任教授)
この度、2023年3月に東京にて第9回日本医療安全学会学術総会を、日本医科大学医学研究科長脳神経外科大学院教授 森田明夫先生と早稲田大学法学学術院 和田仁孝教授の下、共同総会長を拝命し開催させていただきます。
約2年半に渡る新型コロナウイルス感染症への我が国の対応も、諸外国と歩調を合わせながら新しいステージに入ろうとしています。
コロナ禍以降、当たり前だった日常が大きく損なわれ、New
normalのかけ声の下、多くの制限や変化を否応なしに求められてきましたが、コロナ対策も見直しが進む中、第9回総会では、急速に普及したデジタル空間だけでは補えない「何か」を求めて、東京葛飾区の東京理科大学のキャンパスを舞台に、現地開催を目指して参ります。
今回の大会テーマである「Zero Avoidable
Harm」は、WHO Global Patient Safety Action Plan
2021-2030の7つの柱のうちの1番目に掲げられている目標です。
避けられる害をゼロにする、あるいはゼロに近づけることは、患者、家族、医療者の皆に共通する願いです。一方で、現実の医療では、偶発や過誤の別を問わず有害事象が発生し、遭遇した患者側、医療者側の双方の当事者に艱難辛苦を生じさせています。
本来は、病苦に対する「ケア」としての役割が期待されていた医療が、千辛万苦の根源となってしまうという本末転倒な状況が現実の医療の姿の中にはあります。
まずはこうした出来事そのものをできるだけ最小限化すること(予防的安全)を希求すると同時に、「ゼロ」にならない現実を踏まえた対応の仕組み(対処的安全)を構築していくことが求められています。
医療安全元年と言われる1999年以降、20年余にわたり医療者皆で積み上げてきた成果を元に、更なる飛躍と発展を目指して、敢えて「ゼロ」を掲げて、新たな原点となるべく、本学会会員をはじめ多くの関係者の皆様と共に、第9回学術総会を創り上げて参ります。
第9回学術総会の主役は、言うまでもなくご参加の皆様です。
学究の成果はもちろんのこと、日頃の診療、看護、業務の中での創意工夫や気づき、取り組みの成果や課題など、理論と実践の両面から、数多くのご発表を頂き、新たな発見や探究の端緒につなげて頂きたいと考えております。
また、仲間と語らい、新たな人の繋がりが得られる、人と人をつなぐ場でありたいと考えています。
森田代表総会長、和田共同総会長を始め、3名の共同副大会長、学会事務局など関係者一丸となって、第9回総会を成功させて参ります。
春が芽吹く3月の東京で、沢山の皆様の笑顔にお会いできることを心待ちにしております。以上
共同総会長からのメッセージ